スタートアップのつらみ

別につらいことを望んでいる人はいないはずなのですが、つらいことも起こりうるのが仕事です。

ただ、2〜30人程度のスタートアップでは居酒屋でよく聞くような

  • 「働いていないでサボっている先輩がいる」とか
  • 「上司に上手く取り入って出世している人がいる」とか
  • 「頑張っているのに評価されない」とか

これら直接的に特定の誰かや組織が原因となっている「つらみ」とは基本的に無縁です。

一方規模が大きくないスタートアップでは、人も時間もお金も限られています。
そのため、これらリソース要因でのつらいことが多く起こる傾向にあると思っています。

エンジニアの目線になると典型的にはおおよそ次のような感じでしょうか。

  • バグ修正などに時間を取られて新規開発が線表通りに進まない
  • ビジネスサイドにエンジニアの生態(といっていいものか分かりませんが)を理解してもらえない
  • 時間がないのでプログラム設計がきちんとできず、後に重大な仕様上のバグが発覚し手戻りが発生してしまった

それでも事業が伸びているうちは潜在的なつらみに気付かずにいられる、あるいは無視できるためまだ良いのかもしれません。が、いざシラフに戻った時、あるいは成長の踊り場に達してしまった場合、上記の問題が疲労のように一気にきます。

みんなベストを尽くしているのに、つらいことが起こる。そんな環境がスタートアップだといえるのかもしれません。いや、好きで起こしているわけじゃないんですよ、本当ですよ。

とはいえ、じゃあリソースがあれば良いのかというと

  • 人の増加はマネジメントの問題の根源となり、
  • 時間の増加はパーキンソンの法則を引き起こし、
  • お金の増加は、上手く使わねば組織の腐敗の源をもたらす

リスクをもはらんでいると考えます。そして、これらリスクをきちんとケアしなければ、究極的には冒頭の愚痴のような感じになっちゃうような気すらしています。

そう考えるといつであっても、どんな規模であっても組織には問題が発生するものなのだなぁ、としみじみ思います。問題発見の古典、『ライト、ついていますか』で「すべての解答は次の問題の出所」という教訓が出てきますがよく言ったものです。

それはそれとして、気づいてしまったつらみつらみです。問題として起きてしまった、検知してしまったものは、それがどんなに不都合なものであれ、なんとか真正面から立ち向かうしかないのでしょう。
 
じゃあどうやってつらみを解消するんだろうというところなのですが、こればかりは場合とチームによりけりとしか言いようがないです。

その方法が本当に正しかったのか、最善だったのか。それは決めた後、過ぎ去った後ですら分からない。
分からないけど、突き進むしかない。それがチームで合意の取れた解決策だから。

個人的には、つらみの多くの根幹にはコミュニケーションがあるのかなと思っています。意思決定の過程やお客様とのやり取り、マネジメントに至るまで人間同士のやり取りが生まれます。有名な「顧客が本当に必要だったもの」の話はコミュニケーションの難しさを表したものでした。

そんな時、DeNA創業者の南場さんがおっしゃる「コトに向かう力」が大事になってくるのかなぁとよく考えます。(参考)

対人関係上の悩みはたくさん出てくるのだけれど、他人でも自分でもなくて、コトに向かう。(ミクロな意味での)相手の都合や自分の都合ではなく、シンプルにやるべきこと、あるべき姿に注力する。
 
コトに向かうために、組織のビジョンやミッションといったものが必要であり、前提条件として個々人と組織の認識が揃っている必要がある。そんなところではないでしょうか。

つらみは出てくるものですが、チームで乗り越えることで団結が生まれ、次にくるだろうつらみを乗り越えるための強さが育まれるのかな、と思っています。

スタートアップには様々なリソースが足りていません。しかしながらも、その枠内でなんとかかんとかやりくりしていく、上手くやっていく。

そんなところにスタートアップのつらみがあり、また醍醐味があるのだと思います。