最近banjunさんにきのこるエフエムのタイトル決めがいつも素っ気ないという指摘を受けたなーということもあり、ちょっと凝ったタイトルにしてみました。*1
voyage本読み始めた。本編の内容はもちろん広告界隈の事情が分かるコラムが良い感じ。
— treby (@treby006) 2020年10月13日
さておき、いつしかのポストで気になると言っていた本書を読了しました。ここ最近はKindle Paperwhiteを片手に長風呂するのがマイブームなのですが、本書には直近半月くらい入浴時のお供としてお世話になりました。Kindle Unlimited対象なのもありがたい。良い本なのでお布施的に物理本もポチらせていただきました。
中身としては全編対談形式で進行しています。役割(データサイエンス)の軸で切り出している6章を除けば、1章に1つの開発現場を取り上げている6章立ての構成となっており、VOYAGE GROUP内の5つの異なる開発現場の様子を垣間見ることができます。
- fluct (SSP)
- Zucks (アドネットワーク、DSP)
- VOYAGE MARKETING (ECナビ/ポイントサイト)
- VOYAGE Lighthouse Studio (ゲーム攻略サイト/メディア)
- サポーターズ (新卒採用)
VOYAGE GROUPさんとは学生時代にECナビのラボ(という名の高級マンションの一室)が福岡にあって遊びにいってたなー、とか、Tokyu RubyKaigiでお邪魔したなー、とか、前職でfluctやZucksと絡みがあったなー、とかくらいの距離感だったのですが、本書を読み進めることで各事業がどんな風に開発されているのかイメージすることができました。
グループ事業のうち、太いのが広告事業ということで広告業界の用語が出てきます。私自身は前職で一時期、広告に関わる機能(モバイルから収集したIDFAをセグメントに切った上で各プラットフォームに送るようなもの)開発に携わっていたこともあって、楽しく読ませていただきました。
自分の場合は広告がメインというよりは、むしろサブの機能としての立ち位置だったので広告のコアの開発をされている方々の話は新鮮なものがありました。
ちなみに開発当初の私はご多分にもれず、アドテクノロジーわからなさすぎたのでまず教科書を買ってアドテクの勉強をしました。こちらの本もなぜRTBとかアドネットワークとかSSPとかDSPとかあるのか全体を俯瞰できておすすめです。
ただこの本も今となってはちょっと古いので、最近のトレンドである個人情報を尊重しようという流れ(GDPRとかCCPAとか)やそれに呼応する形でのプラットフォームの対応(ITPやprivacy sandbox、IDFA取得のオプトイン化など)までは触れられてません。voyageでは流石、この辺りの事情までカバーされています。
また、私の知識でいうと教科書を読み込んだとはいえ結局座学で、なんならDSPとSSPが分かれているのが腹落ちしていないレベルでした。それが本書の中では開発者の目線でなぜそれらプレイヤーがいるのかというところまで補足していただけているので門外漢なりに広告ドメインの理解を深めることができました。
中でも、向き合っているクライアントが違うため絶対外せない要件も異なる(「広告が出ない」という事象への温度感だったり、CTRの重要度だったり)というのが私のお気に入りで、より納得感を持てたかと思います。
と、広告の話がだいぶ長くなってしまったのですが開発者視点では、どんな会社でも起こるだろうイベントについて具体的な取り組みと結果が書かれているのがおすすめです。
レガシー化したシステム、ドキュメントがない魔窟、開発者がほぼいない状況での開発、ビジネス職の方といかにコミュニケーションをとるか……etc.一つ一つを見ればあるあるな状況をどうやって乗り越えたのか、乗り越えようとしたのかといった事例は、今後自分自身にも新たに立ちはだかるだろう状況を打破する参照先として活用できるものでしょう。
もちろん、ほとんどの仕事が一人で動かせるものではありませんから、まずは一定関係者の意識を揃えるのが肝要です。その際に本書の立ち位置が「これ読んでおいて」と渡すだけで良いものなのか、あえて渡さずに婉曲的に組織・チームを導いて達成するものなのかは、組織文化だけでなく自分自身の携わり方(その組織での権威レベル)にも関連してきます。
ただ、これらいずれの場合にあっても課題・打ち手・根拠・その他オプションがリファレンスとしてまとまっているのはありがたいことだな、と思います。
なお、私は読み始めにajito.fmの特集回をインプットしたのもあって、読み進める中で「ああ、あそこで話していたのはこのことか」と関連づけられてよかったです。
「いい感じにする」というのもここから意識したキーワードで、この言葉がまさにVOYAGE GROUPの文化を表しているのだろうな、と感じられました。
*1:ちなみに執筆時点ではブログ記事を一本書くよりも、ポッドキャストのエピソードを一つ公開した方がたくさんの人に届けられているみたいです。めげない。